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「売上は伸びているのに何故か利益が思ったほど伸びていない」
そんなお声をよく耳にします。
営業を叱咤激励して更なる受注獲得に邁進する前に是非このコラムを読んでみて、
自社の『損益構造』を確認してみてください。
『がむしゃらに売上を追い求める経営』から抜け出せるヒントがたくさんあります。
シンプルな利益の構造と因数分解の重要性
利益は売上から経費を差し引いた残り、ということになります。
言われるまでもないほどシンプルですよね。
ですから利益を上げるには基本的に以下の3つしかありません。
- 売上を上げる
- 経費を下げる
- その両方
確かにシンプルですが、このシンプルな構造をいかに因数分解して実務に落とし込めるかが大切になってきます。
売上を増やす
売上を増やす、というと営業で新規開拓をイメージしがちですが、もう少し解像度を上げつつ、その打ち手を列挙してみます。
売上の構造
『営業で新規開拓』は、『販売数量』を上げるための一つの手段ということですね。
販売単価を上げる
販売単価を上げれば同じ販売数量でも単価が上がった分だけ売上が上がります。
販売単価:100,000円/仕入れ単価:7万円/販売数量:100個の商品
〔売上高〕100,000円×100個=10,000,000円
〔売上原価〕70,000円×100個=7,000,000円
〔粗利〕10,000,000円-7,000,000円=3,000,000円
〔粗利益率〕3,000,000円/10,000,000円=30%
仮に販売単価を5万円(5%)上げることができたら
〔売上高〕105,000円×100個=10,500,000円
〔売上原価〕70,000円×100個=7,000,000円
〔粗利〕10,500,000円-7,000,000円=3,500,000円
〔粗利益率〕3,500,000円/10,500,000円=33.3%
販売単価を5%上げると利益は単価増加により単価増加分だけ増加します。
ただし粗利益率が5%上がるわけではありません。
売上高が増加するためです。
販売数量を増やす
販売数量を増やせば同じ販売単価でも数量が増えた分だけ売上が上がります。
販売単価:100,000円/仕入れ単価:7万円/販売数量:100個の商品
〔売上高〕100,000円×100個=10,000,000円
〔売上原価〕70,000円×100個=7,000,000円
〔粗利〕10,000,000円-7,000,000円=3,000,000円
〔粗利益率〕3,000,000円/10,000,000円=30%
仮に販売数量を105個(5%)増やすことができたら
〔売上高〕100,000円×105個=10,500,000円
〔売上原価〕70,000円×100個=7,000,000円
〔粗利〕10,500,000円-7,000,000円=3,500,000円
〔粗利益率〕3,500,000円/10,500,000円=33.33%
販売数量を5%上げると利益は単価増加により単価増加分だけ増加します。
ただし粗利益率が5%上がるわけではありません。
販売単価を5%上げた時と同様です。
販売単価を上げて、販売数量を増やす
販売単価も販売数量も改善した場合はどの様になるでしょうか?
販売単価:100,000円/仕入れ単価:7万円/販売数量:100個の商品
〔売上高〕100,000円×100個=10,000,000円
〔売上原価〕70,000円×100個=7,000,000円
〔粗利〕10,000,000円-7,000,000円=3,000,000円
〔粗利益率〕3,000,000円/10,000,000円=30%
仮に販売単価を103,000円(3%)上げて、販売数量を102個(2%)増やすことができたら
〔売上高〕103,000円×102個=10,506,000円
〔売上原価〕70,000円×100個=7,000,000円
〔粗利〕10,506,000円-7,000,000円=3,506,000円
〔粗利益率〕3,506,000円/10,506,000円=33.37%
『単価を5%上げ』や『販売数量を5%増』の時よりも若干ですが、利益の金額は増加しました。
値上げをためらう前に「許容できる販売数量の減少」を計算する
「値上げしたいけれど、お客様が離れてしまうのでは?」という不安から、値上げに踏み切れない経営者の方はとても多くいらっしゃいます。
ですが、値上げ後に販売数量が多少減少しても、利益が今より増える「許容ライン」を事前に把握しておけば、根拠を持って値上げの判断ができます。
許容できる販売数量の減少を計算する
考え方はシンプルです。
「値上げ後の粗利合計が、値上げ前の粗利合計と同じになる販売数量」を求めればよいのです。
販売単価:100,000円/仕入れ単価:70,000円/販売数量:100個
〔粗利単価〕100,000円-70,000円=30,000円
〔粗利合計〕30,000円×100個=3,000,000円
仮に販売単価を110,000円(10%)に値上げしたとすると
〔値上げ後の粗利単価〕110,000円-70,000円=40,000円
値上げ前と同じ粗利合計(3,000,000円)を確保するために必要な販売数量は
3,000,000円÷40,000円=75個
つまり、販売数量が100個から75個に減少しても(25個減=25%減)、利益の総額は変わりません。
10%の値上げをしても販売数量の減少が25%未満であれば、値上げ前より利益が増えることになります。
根拠をきちんと説明した上で値上げに踏み切る十分な根拠になります。
「値上げ+販売数量の維持」は最強の利益改善策
値上げをしても販売数量が変わらなければ、値上げした分がそのまま利益になります。
固定費は変わらず、仕入れコストも変わらないにもかかわらず、受取金額だけが増えるためです。
適正な値付けをすることは、単なる「強気な営業」ではなく、正当な価値に見合った対価を得ることです。
ぜひ、値上げを検討する際にはまず「許容できる販売数量の減少ライン」を計算してみてください。
経費(費用)を下げる
今度は経費側を見てみましょう。
経費(費用)の構造
費用は大きく分けて、『変動費』と『固定費』に分けられます。
『変動費』とは販売数量に比例して発生する費用です。
商品販売業における商品仕入れ高、飲食業における材料費などがこれらに該当します。
これらのケースでは『変動費=売上原価』と考えれば良いと思います。
ただし、製造業や建設業などは『変動費≠売上原価』なのでご注意ください。
くわしくは過去の以下のコラムをご参照ください。
変動費は『比率』で見る
変動費は売上が上がれば比例して上がるので、売上高に占める割合【変動費率】で考えると良いです。
売上高から変動費を差し引いた利益のことを【限界利益】と呼びます。
変動費率を下げれば限界利益率が上がり利益が大きくなります。
〔変動費率〕7万円/10万円=70%
(限界利益率:30%)
仮に仕入れ価格を5万円に値下げできたら
〔変動費率〕6万円/10万円=60%
(限界利益率:40%)
となります。
この10万円の商品が100個売れたら、1,000万円の売上で限界利益は300万円ですが、
変動費率を60%に抑えられれば限界利益は400万円と100万円利益が増えます。
今回のケースでは、10%の変動費圧縮で100万円の利益が増加したことになります。
変動費(仕入れ価格)を見直して変動費率を圧縮する
変動費率を下げる最も直接的な方法が、仕入れ価格の見直しです。
変動費率が変われば売上が増えなくても利益が増える
売上単価を変えずに仕入れ価格を下げられれば、その分だけ限界利益率が上がり、売上が同じでも手元に残る利益が増えます。
販売価格:100,000円/仕入れ価格:70,000円の商品を100個販売
〔変動費率〕70,000円÷100,000円=70%(限界利益率:30%)
〔限界利益合計〕100,000円×30%×100個=3,000,000円
仕入れ価格を63,000円(10%削減)に引き下げられたら
〔変動費率〕63,000円÷100,000円=63%(限界利益率:37%)
〔限界利益合計〕100,000円×37%×100個=3,700,000円
売上は変わらないまま、利益が700,000円増加します。
仕入れ価格を10%削減できれば、変動費率が7ポイント改善し、限界利益が一気に増加します。
このように変動費率の改善は、売上を1円も増やさずに利益を増やせる強力な手段です。
仕入れ価格を見直す主な手法
仕入れ価格の見直しと聞くと「取引先に値引き交渉するだけ」と思われがちですが、実際にはさまざまなアプローチがあります。
- 仕入れ先への価格交渉:取引量・取引実績をもとに、定期的な見直しを依頼する。長期取引の安定供給を武器に交渉するのが基本です。
- 仕入れ先の複数化・相見積もり:単一仕入れ先への依存から脱却し、複数社から見積もりを取ることで競争原理を働かせます。
- まとめ発注・ロット交渉:発注量をまとめることで単価を引き下げるよう交渉します。在庫管理コストとのバランスに注意が必要です。
- 仕入れ先の見直し・変更:同等品質の代替品や代替仕入れ先を探すことで、コスト競争力を高めます。
- 仕様・規格の見直し:過剰品質になっていないか確認し、品質水準を維持しつつも必要十分なスペックの商品・材料に切り替えることを検討します。
ただし、仕入れ価格の引き下げを最優先にして品質や供給安定性を損なうことは避けなければなりません。
「コスト」と「品質・安定供給」のバランスを常に意識しながら交渉・見直しを進めることが大切です。
固定費は金額で見る
変動費が売上が上がるにつれて増えていくので、『率』で見ますが、固定費は売上と連動しないので金額で見ることを基本にします。
固定費は
- 固定原価(製造業や建設業などで発生)
- 販管費
- 営業外費用
- 特別損失
に分けて考えます。
固定原価
生産現場の人件費、工場の建物や設備の減価償却費、製造設備などの燃料費や水道光熱費などがあります。
稼働(売上)に比例している燃料費などは変動費ですが、そうでないものは固定費となります。
販管費
役員報酬、営業や管理部門の人件費、消耗品費、交際費など営業や管理部門の経費全般です。
営業外費用
本業以外で経常的に発生する費用です。
主に財務活動に伴う費用(借入金の利息や為替差損、有価証券の売却損など該当)となります。
特別損失
通常の営業活動以外で発生する突発的かつ臨時的な多額の損失です。
災害損失、固定資産の除却損や売却損、リストラ費用などが該当します。
税金はどうする?
『法人税等』に計上されるものは主として「利益に一定比率を掛け算して」計算される費用です。
ですから基本的に変動費・固定費とは別物として取り扱います。
ただ、最終的には利益から引かれる費用の一種であり、最終的な利益は税金を差し引いた後の金額となることは覚えておいてください。
固定費の削減は「そのまま利益」になる
売上を上げることで利益を増やそうとする場合、売上増加の恩恵は限界利益率の分しか利益に反映されません。
たとえば限界利益率が30%の事業であれば、100万円の売上増加で増える利益は30万円です。
ところが固定費の削減はまったく異なります。
固定費を30万円削減できれば、30万円がそのまま利益になります。
売上の増減とは無関係に、です。
固定費削減と売上増加の「利益への貢献」を比べる
限界利益率:30%の事業において、利益を30万円増やすには?
【売上増加で30万円の利益を得るには】
30万円 ÷ 30% = 100万円の売上増加が必要
【固定費削減で30万円の利益を得るには】
30万円の固定費削減で完結
同じ利益増加効果を得るために、売上増加では固定費削減の約3倍以上の努力が必要になります。
もちろん、固定費の中には削りすぎると事業の根幹を揺るがすものもあります。人件費や広告費などは慎重に判断が必要です。
ただ、まず「本当に必要な固定費かどうか」を一つひとつ見直すことが、即効性の高い利益改善につながります。
固定費の見直しチェックリスト
以下の項目を定期的に確認する習慣をつけましょう。
- 使っていないサブスクリプションや月額サービスはないか
- 稼働率が低い設備・スペースのリース・賃借料はないか
- 業務量に見合っていない人員配置になっていないか
- 金利・手数料など財務コストの見直しの余地はないか
- 長期間更新されていない保険契約の見直しはできないか
中小企業経営者が最初に押さえておきたい利益獲得の考え方
ここまで売上・変動費・固定費といった視点から利益増加策を見てきました。
最後に、会計数値の管理に不慣れな経営者の方が「まず最初に知っておきたい」ポイントをまとめます。
「売上総利益(粗利)」こそ経営の出発点
損益計算書(P/L)の中で、経営者が真っ先に注目すべきは売上総利益(粗利)です。
売上高からどれだけの粗利を稼ぎ出せているかを示すのが粗利益率であり、これが低いと販管費・固定費を賄うことができず、最終的な利益が出にくい体質になります。
「損益分岐点売上高」を知れば目標が明確になる
損益分岐点売上高とは、利益がちょうど「ゼロ」になる売上高のことです。
この数字を知っておくことで、「最低でもこれだけは売らなければならない」という経営の安全ラインが見えてきます。
固定費:2,400,000円/限界利益率:30%の場合
損益分岐点売上高 = 2,400,000円 ÷ 30% = 8,000,000円
月の売上が800万円を超えれば利益が出る、800万円を下回れば赤字になる、ということがひと目でわかります。
損益分岐点は固定費が下がれば下がり、限界利益率が上がれば下がります。
つまり「固定費を減らす」「変動費率を下げる(粗利を厚くする)」の両方が、経営を楽にすることに直結します。
「商品・サービス別」の利益を把握する
売上全体の数字だけを見ていると、どの商品・サービスが利益に貢献しているかがわかりません。
意外と多いのが、「売れているけれど利益が薄い商品」が会社全体の利益を引き下げているケースです。
まずは主力商品・サービスごとに、おおまかでいいので「売上」「変動費(原価)」「粗利」を把握してみてください。
利益の出ていない商品を減らして、利益率の高い商品に経営資源を集中させることで、売上が変わらなくても利益が増えることがあります。
「月次」で数字を追う習慣をつける
年に一度、決算書を眺めるだけでは手遅れになることがあります。
月次で売上・粗利・固定費・営業利益をざっくりとでも確認するだけで、問題の早期発見と迅速な手当が可能になります。
「月次試算表を毎月確認する」これだけで経営の質は格段に上がります。
難しいことは後回しにして、まずはこの習慣づくりから始めてみてください。
「利益」と「キャッシュ(現金)」は違う
最後にもう一つ。
利益が出ていても資金が足りなくなる「黒字倒産」は現実に起きています。
損益計算書の利益とは別に、実際のお金の流れ(キャッシュフロー)を把握することが重要です。
- 売掛金の回収サイトが長くなっていないか
- 在庫が増えすぎていないか
- 借入返済が資金を圧迫していないか
利益管理と並行して、手元資金の動きにも目を向けるようにしてください。
まとめ
利益を増やすための打ち手は「売上を上げる」「経費を下げる」のシンプルな構造ですが、実際の現場ではその内訳と優先順位を整理して取り組むことが重要です。
- 値上げは「許容できる販売数量の減少ライン」を計算すれば根拠を持って判断できる
- 固定費の削減は売上増加より直接的・即効的に利益へ貢献する
- 粗利益率・損益分岐点・商品別利益・月次管理・キャッシュフローを押さえることが経営改善の基礎となる
「売上を追うだけの経営」から一歩踏み出して、数字の構造を理解した上での経営判断ができるようになることが、安定した利益体質をつくる第一歩です。
自社の損益構造に不安や疑問がある方は、ぜひ一度ご相談ください。
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