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「どうせ予算通りになんかならないから、予算管理なんてやらない」
そんな経営者のお言葉を良く耳にします。
実はだからこそ価値があるのです。
予算通りにはならない数字にこそ『お宝』が眠っているのです。
難しい会計知識は不要です。
このコラムでは、予実管理をゼロから始めるための考え方と、続けるための仕組みづくりを、一緒に整理していきます。
先行きが見えない不安を、経営の羅針盤に変える
なぜ、経営者は数字に追われるのか
中小企業の経営者は、本当に孤独です。
現場の仕事をこなしながら、営業も、採用も、資金繰りも、すべて自分で判断しなければならない。
そのうえ、「数字もちゃんと見なきゃ」と思いながら、結局は月次の試算表を眺めてため息をつくだけで終わってしまう、という方も少なくありません。
なぜそうなってしまうのか。
それは、数字を「過去の記録」としてしか見ていないからです。
試算表は確かに大切な資料ですが、それだけでは「先月どうだったか」しかわかりません。
「これからどうするか」を考えるためには、目標(予算)と現実(実績)を比べる視点が欠かせないのです。
「予実管理」は監視ではなく、経営者の守護神
「予実管理」と聞くと、大企業がやるような難しいもの、と感じる方もいるかもしれません。
でも、本質はとてもシンプルです。
これは、数字で社員を管理したり、自分を追い込んだりするためのツールではありません。
むしろ、「先行きの見えない不安」を「見える化された課題」に変えることで、経営者自身が安心して舵を取るための羅針盤です。
予算と実績を見比べることで、「なぜ売上が足りなかったのか」「どこで費用が膨らんだのか」が具体的にわかるようになります。
そのわかった事実をもとに次の手を打てる。
それが予実管理の真の価値です。
完璧を目指さない。まずは「できる範囲」から始める
最初から精密な予算は挫折の元
予実管理を始めようとして、最初につまずくのが「予算の立て方がわからない」という壁です。
「来月の売上をいくらに設定すればいいのか。」
「どこまで細かく費用を分けるべきか。」
「正確に計算しなければ意味がないのでは。」
そういった思いが重なって、結局何もできないままになってしまうことはよくあります。
でも、最初から精密な予算など必要ありません。
まずは、去年の同じ月の実績をそのまま予算として使う、それだけで十分です。
【スタート時の予算設定の例】
昨年10月の実績:
〔売上高〕2,500,000円
〔売上原価〕1,500,000円
〔粗利〕1,000,000円
〔固定費〕800,000円
〔営業利益〕200,000円
→ 今年10月の予算として、この数字をそのまま使う。
「目標」は後から微調整すればOK。
まず「比べるベースライン」を持つことが最初の一歩。
慣れてきたら「今期は売上10%アップを目指す」などの目標を上乗せしていけばよい。
「どんぶり勘定」を抜け出すための最初のステップは、「正確な予算を立てること」ではなく、「比べる習慣を持つこと」です。
「どんぶり」から脱却するための最初のステップ
比べる習慣を持つために、まず手をつけてほしいのが「月次での振り返り」の定例化です。
毎月1回、30分だけ数字を見る時間を確保する。
それだけで構いません。
チェックするポイントは、最初は以下の3つに絞るだけで十分です。
- 〔売上高〕:予算と実績の差はいくらか
- 〔粗利益〕:利益率に変化はないか
- 〔固定費〕:想定外の費用が発生していないか
この3点を確認するだけで、「何となく怖い」から「何が起きているかわかる」状態に変わっていきます。
そしてその積み重ねが、経営の感覚を研ぎ澄ませていくのです。
予実管理を「仕組み」にするための最低限のインフラ
エクセルで属人化させるリスク
「エクセルで管理しています」という経営者の方は多いです。
最初のうちはそれでも問題ありません。
ただ、エクセル管理には落とし穴があります。
- 経営者本人しかファイルの場所や使い方がわからない
- データ入力ミスが起きても気づきにくい
- 集計作業に時間がかかり、本来の「分析」に使える時間が減る
特に問題なのが、集計作業に追われて「数字を見て考える時間」がなくなってしまうことです。
予実管理の目的は「正確に入力すること」ではなく、「数字をもとに考えて動くこと」です。
集計に追われているうちは、管理のための管理になってしまいます。
会計ソフトを「記録」ではなく「分析」に使い倒す
会計ソフトを導入している場合、実はすでに予実管理のインフラはほぼ整っています。
多くの会計ソフトには、「予算登録」と「予算対比レポート」の機能が備わっています。
予算の数字を一度入力しておくだけで、毎月自動的に実績と比較したレポートが出力されます。
①勘定科目ごとに月次予算を登録する
②毎月の入力を経理担当者に任せる
③月次レポートを見て、差異の大きい項目だけ確認する
経営者がやることは「③の確認と判断」だけです。
集計はソフトがやってくれます。
そしていずれ社内に定着したら差異の大きい項目の一次確認は経理担当者に任せて、更に深いところだけを経営者目線で見ることにシフトしていけば有効性は更に上がります。
「会計ソフトはただの帳簿ツール」と思っていた方も、ぜひ分析ツールとして使い倒してみてください。
見えている景色が変わります。
数字の一喜一憂を卒業し、次の手を打つためのPDCA
予算未達は「叱責」ではなく「発見」の機会
予実管理をしていると、必ず「予算未達」の月が出てきます。
そのとき、「何故できなかったんだ」と自分や社員を責めてしまうのは、もったいないことです。
未達はむしろ、経営の「ズレ」を発見するチャンスです。
たとえば、こんな発見があります。
- 売上は達成したのに利益が足りない→原価率が上がっていた
- 売上が落ちた→特定の顧客からの受注が止まっていた
- 固定費が増えた→採用コストや広告費が想定外に膨らんでいた
数字のズレには、必ず原因があります。
その原因を「見て見ぬふり」せず、丁寧に拾っていくことが経営改善の第一歩です。
行動を変えるための「原因分析」のススメ
原因分析と聞くと、難しく感じるかもしれません。
でも、やることはシンプルです。
【原因分析の例】
〔売上予算〕3,000,000円
〔売上実績〕2,600,000円
〔差異〕△400,000円(予算未達)
考えるべき問い:
・受注件数が減ったのか、それとも1件あたりの単価が下がったのか?
・件数が減ったなら、営業活動の量が落ちたのか、失注が増えたのか?
・単価が下がったなら、値引き対応が増えたのか、商品構成が変わったのか?
「何が変わったか」を1段階ずつ掘り下げるだけで、次に打つ手が見えてくる。
すべての原因を完璧に解明しようとしなくて大丈夫です。
「これが主な原因らしい」という仮説を持ち、来月の行動に反映させる。
その小さなPDCAサイクルの積み重ねが、経営の精度を上げていきます。
走り続けることで、経営の景色が変わっていく
「なんとなく」の不安が消える瞬間
予実管理を3ヶ月、半年と続けていくと、あるとき気づく瞬間が訪れます。
「あ、今月の着地がなんとなく読めるようになってきた。」
それは、数字を見続けることで、自社の季節変動・費用の傾向・利益の出るパターンが、頭の中に蓄積されていくからです。
最初は「数字が怖い」と感じていた経営者の方が、半年後には「月初に先月の数字を確認するのが習慣になった」とおっしゃるケースはとても多いです。
「なんとなくの不安」は、知らないことから生まれます。
数字と向き合い続けることで、その不安は少しずつ消えていきます。
予実管理が育てる、経営者としての自信
予実管理が定着してくると、経営判断の質が変わってきます。
たとえば、新しい設備投資を検討するとき。
「なんとなく売れているから大丈夫だろう」ではなく、「今の〔固定費〕と〔粗利益率〕から計算すると、月にあと〇〇円の粗利があれば返済できる」という根拠のある判断ができるようになります。
あるいは、銀行から融資の話が来たとき。
数字で自社の経営状況を説明できる経営者と、「なんとなくうまくいっています」しか言えない経営者では、信頼のされ方がまったく違います。
予実管理は、単なる数字の管理ツールではありません。
経営者としての判断力と自信を、少しずつ育てていくプロセスです。
完璧でなくていい。
続けることに意味があります。
まとめ
- 予実管理とは「目標と実績を比べて、次の行動につなげる」シンプルな習慣であり、大企業だけのものではない
- 最初は過去の実績をそのまま予算に使うだけでOK。「比べる習慣」を持つことが最初の一歩
- 会計ソフトの予算機能を使えば、集計作業はソフトに任せられ、経営者は「分析と判断」に集中できる
- 予算未達は責める材料ではなく、経営のズレを発見するチャンス。原因を1段階掘り下げるだけで次の手が見えてくる
- 続けることで「なんとなくの不安」が消え、根拠のある経営判断と経営者としての自信が育っていく
「予実管理を始めたいけれど、何から手をつければいいかわからない」「自社の数字の読み方を一緒に整理してほしい」という方は、ぜひ一度ご相談ください。
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