利益は出ているのに何故か月末にお金がない!|会計のプロが資金不足の謎を解く

中小企業経営者にとって、資金繰りは頭の隅から離れない悩みの種ですよね。
身を粉にして売り上げを上げても、ちっとも手元の資金が増えない。
そんな日常をお過ごしでしょうか?
いつもモヤモヤしているのは、「構造を理解していない」かもしれません。

このコラムでは、「資金繰りの仕組み」を簡単にわかりやすく解説していきます。
こんなモヤモヤをすっきりさせて、
「自社に必要な資金を残すにはどうしたらいいか?」
の道しるべにしていただけたらと思います。

損益計算書に必ずしも連動しない資金の動き

会社にお金が残らない本当の理由を知るために、まずは帳簿上の「利益」と、実際のお金の動きがなぜ一致しないのか、その根本的な原因を紐解いていきましょう。

まずは最もモヤモヤしている利益が資金に直結しない原因について探っていきましょう。
その月、その期の利益は損益計算書を見れば一目でわかります。
「当期純利益」が100万円なら、手元の現金が100万円増えているはず、そう思いたくなりますが、現実はそうはなりません。
その原因を整理してみましょう。

損益計算書に載らないお金の出入り

会社の通帳からお金が出ていっているのに、なぜか利益を計算する書類にはそれが現れない。
そんな不思議な現象が起こる原因は会計のルールにあります。

損益計算書は売上(収益)から経費(原価や費用)を差し引いて計算されますが、お金の動きは売上でも経費でもないものも混じっています。
代表的なものを挙げてみましょう。

借入金

利息は経費ですから損益計算書に載りますが、元金の返済は損益計算書に載りません。
貸借対照表の借入金の残高の推移として表現されます。
例えば、毎月10万円の元金返済があった場合に、9月の借入金残高が950万円だったのが、10月には940万円に減っているはずです。
利益が100万円でも手元に残るお金は90万円に減ってしまいますね。
逆に融資を受けた月は利益が無くてもどーんと資金が増えているはずです。

売掛金の入金タイミング

損益計算書の売上とは「その月に売上が上がった金額」を集計しています。
売上代金は翌月以降に入金するのがほとんどです。
手形や電子債権での支払となれば現金化のタイムラグは大きくなっていきます。

買掛金・未払金の支払タイミング

売掛金の入金同様、支払い側にもタイミングがあります。
仕入代金がかさんでも資金が動くのは翌月だったりしますよね?
また電子債権での支払が常態化している場合には取引と現金の減少のタイミングの差が広がってきます。

売掛金・買掛金の動きは取引発生から少し遅れてやってきます。
例えば待望の大きなプロジェクトの完了で売上がどーんと上がった月は、
「さぞかし資金も潤ってるだろう」
と思っても、検収の遅れなど取引先の都合で遅れることもあります。
現在は法律が厳しくなってきたので大きな入金の遅れは緩和される方向にありますが、それでも「思っていたのと違う」原因になります。

在庫の量

在庫は貸借対照表に「商品」「材料」「仕掛品」「製品」といった勘定科目で計上されています。
これらは利益に貢献せずに「資金が眠っている」状態と言えます。
顧客の要望に応えるために必要な在庫ではありますが、過大な在庫は資金を圧迫する要因となります。

税金も実は未払金

法人税や消費税などの税金も利益に連動して発生しますが、実際に現金を支払うのは決算が終わってから(原則2ヶ月後)になります。
そのため「利益が出たから」と決算直後に安心して使ってしまうと、後からやってくる納税のタイミングで一気に資金ショートを起こす原因になってしまうのです。

固定資産と減価償却費

固定資産は経費ではなく資産として貸借対照表に計上されます。
工場や店舗、機械などの固定資産を沢山保有している企業では影響額も大きくなるので注意が必要な項目です。

固定資産の購入

100万円の機械を現金で買った場合、通帳からは今すぐ100万円が消えます。
しかし、損益計算書上の経費になるのはその年の分(例えば20万円など)だけ。
つまり「手元のお金は一気に減ったのに利益はあまり減っていない」という、経営者にとって一番陥りやすいワナを作ってしまうのです。

減価償却費

車や機械などの大きな買い物をした際、購入した年に一括で経費にするのではなく、数年に分けて少しずつ経費化していくルールのことです。
つまり、お金は「買った年」に一気に出ていきますが、経費としては「その後何年間も」計上され続けます。
これにより、お金が出ていかないのに利益が減るというズレが生まれます。

運転資金という考え方

利益と資金のズレの正体が見えてきたところで、次に重要になるのが「運転資金」です。
会社を安全に回していくために、一体いくらのお金が常に必要なのかを考えてみましょう。

「運転資金なんて、なんとなく通帳に残っていればいいだろう」
と、お考えかもしれませんが、運転資金とはもっと「測定すべき数値」だということを再認識してみてください。

運転資金とは

運転資金とは、会社が日々の営業活動(仕入、給与の支払い、経費の支払いなど)をストップさせずに、スムーズに続けていくために最低限キープしておかなければならない「前もって必要なお金」のことです。
売上が入ってくるまでの「つなぎの資金」とも言えます。

運転資金は事業の状況によって変化する

運転資金の額は、常に一定ではありません。
例えば、ビジネスが急成長して売上が倍になれば、その分だけ先に支払う仕入代金や人件費も倍になります。
つまり、「業績が良くて売上が伸びているときほど、たくさんの運転資金が必要になる(資金が不足しやすくなる)」というパラドックスが起こるのです。

自社の適正な運転資金を把握する

自社にとって本当に必要な運転資金がいくらなのか、計算したことはありますか?
これを感覚に頼っていると、突然の大口受注に対応できなくなったりします。
一般的には「売掛金 + 在庫 - 買掛金」という数式で、自社が常に立て替え続けなければいけない金額の目安を導き出すことができます。

資金についてのモヤモヤを解消するには

原因と仕組みがわかれば、あとは実践です。
手元の資金に対する不安やモヤモヤを、具体的な数字を使って解消していくステップへ進みましょう。

資金の動きを「見える化」する

まずは頭の中や通帳だけで管理するのをやめ、自社の資金が「いつ」「どこへ」動くのかをカレンダーのように視覚的に整理することから始めましょう。

  • 借入金返済予定を月別に一覧にする
  • 取引先ごとの売掛金回収サイクル(サイト)を一覧にする
  • 仕入先への支払サイクル(サイト)を一覧にする

現状の適正運転資金を計算してみる

見える化したデータをもとに、先ほどの計算式を使って「今、自社には最低いくらのキャッシュが眠っていなければいけないのか」を実際に計算します。
これを行うことで、「利益は出ているのに、なぜ今月は通帳の残高がこれだけしかないのか」という理由が、パズルのピースがハマるようにすっきりと理解できるようになります。

モヤモヤを安心に変えるための行動指針

見える化ができたら、具体的に不安解消の道筋を立てていくことになります。
売掛金の回収条件の見直し、在庫の適正化、戦略的な借入金の見直しなど取り組めることはあります。
「沢山やることがあるなぁ」
思ってしまうと、気が重くなりますが、ひとつひとつ着実に取り組めば、社長の脳内はスッキリとモヤが晴れていくと思います。

一人では息切れしてしまう、そんな不安が経営者さんは、
具体的な行動指針の立て方や注意点などを当社の無料相談で詳しくお伝えいたしますので、お気軽にご相談ください。

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