「月次の数字が出るのは、いつも翌々月の中旬…」
「顧問の税理士さんに資料を渡したあと、結果が返ってくるまでは『待ち』の状態です」
そんなお悩みをお持ちの経営者の方は多いのではないでしょうか。
先月の売上や利益がわからないまま、経営判断を迫られる場面は少なくありません。
このコラムでは、
会計ソフトを自社で入力した方が良い理由と「まだ自社で会計ソフトを使っていない」場合の導入の手順を具体的な数字を交えながらやさしく解説します。
税理士事務所任せの経理で月次決算が遅くなる理由
資料のやり取りだけで、毎月かなりの日数がかかる
税理士事務所に経理を任せている場合、基本的な流れは次のようになります。
- 月末に通帳・請求書・領収書などの資料をまとめる
- 翌月の上旬に、資料を税理士事務所へ送付する
- 税理士事務所が会計ソフトに入力し、不明点があれば確認の連絡が入る
- 確認が終わって、ようやく試算表(月次の成績表)が完成する
この流れでは、資料をそろえて送るだけで数日、
事務所での入力と確認にさらに1〜2週間かかるのが一般的です。
税理士事務所は多くの顧問先を同時に抱えているため、
どうしても順番待ちが発生します。
事務所の担当者が怠けているわけではありません。
仕組みとして、外部に入力を任せる限り、スピードに限界があるのです。
月次決算が「翌々月」にずれ込むと何が困るのか
月次決算とは、毎月の売上・経費・利益を締めて、会社の成績を確認する作業のことです。
この結果が出るのが遅いと、経営判断もその分だけ遅れてしまいます。
たとえば、次のようなケースを考えてみましょう。
月商:1,000万円/本来の〔粗利益率〕:30%の会社
3月に仕入先の値上げがあり、実際の〔粗利益率〕が27%に低下した
〔本来の粗利〕1,000万円×30%=300万円
〔実際の粗利〕1,000万円×27%=270万円
〔1か月あたりの利益の減少〕300万円-270万円=30万円
税理士事務所任せで3月分の試算表が5月中旬に出た場合
→ 値上げの影響に気づくのは、約1.5か月後
〔気づくまでに失った利益〕30万円×1.5か月=45万円
自社入力で3月分の数字が4月上旬に確認できた場合
→ 気づくのは約0.3か月後
〔気づくまでに失った利益〕30万円×0.3か月=9万円
同じ値上げでも数字を確認できるタイミングが早ければ販売価格の見直しや仕入先の変更といった対策を『36万円分』早く打てる計算になります。
数字が古いと、打てる手も限られてしまう
経営の数字は、いわば「天気予報」のようなものです。
明日の天気がわからなければ傘を持てませんが、
先月の数字がわからなければ、今月の打ち手も決められません。
資金繰りも同じです。
月次の数字が遅れると、
「利益は出ているはずなのに、なぜか預金が減っている」という状況に気づくのも遅れます。
数字の鮮度は、そのまま経営のスピードに直結するのです。
会計ソフトは「自社で使いこなす」と圧倒的に効率的な理由
会計ソフトは経理のためではなく、経営分析のための道具
会計ソフトというと、「決算書や税金の申告書を作るための道具」というイメージがあるかもしれません。
しかし本来の姿は、自社の数字を分析するための便利ツールです。
取引を入力すると、試算表・推移表・勘定科目ごとの内訳が自動で集計されます。
グラフで売上や経費の動きを見ることもできます。
これを自社で使えば、見たいときに、見たい切り口で数字を確認できます。
入力と同時に数字が動くから、「待ち時間」がなくなる
自社で入力すると、取引が発生した日、あるいは数日以内には数字に反映されます。
月末を迎えた時点で、ほとんどの取引が入力済みという状態も作れます。
最近の会計ソフトは、銀行口座やクレジットカードと連携して、
取引明細を自動で取り込む機能を備えています。
この機能を使えば、通帳を見ながら1件ずつ手で打ち込む必要もありません。
入力というより、確認と仕訳の承認に近い作業になっています。
自社で入力するのは大変ではないか?という疑問
「経理の専任者がいないのに、自社で入力できるのだろうか」
そう不安に思われる方もいらっしゃるでしょう。
ここで大切なのは、役割分担を見直すという考え方です。
- 日々の入力と数字の確認は、自社で行う
- 仕訳のチェック、税務判断、決算・申告は、専門家に任せる
- 月次の数字をもとにした経営相談は、専門家と一緒に行う
こうすることで、税理士事務所は「入力代行」ではなく、
本来の強みである「チェックとアドバイス」に集中できます。
経営者の側も、自社で数字を持つことで、専門家への相談の質が上がるというメリットがあります。
「間違いがあったら大変!」を恐れることはない
自社で会計ソフトに入力することで間違いがあっても気付かれない、そんな風に心配する経理担当者もいます。
顧問税理士のチェックについては従来通りやってもらえば心配ありません。
自社の経営に使用する数値は『チェック前』の数字で行い、税務を中心とした「法律を守る」部分は税理士事務所にしっかりチェックしてもらいます。
もし自社の処理が間違っていたら、その時に会計ソフトのデータを修正すれば良いのです。
消費税の処理など、大抵は経営数値の体制に影響のない修正であるため、年度末に行う税務申告に間に合うように修正できれば問題ありません。
また、自分で会計データを入力すれば間違いに気づきやすくなりますし、それでも間違えやすい処理は会計ソフトに備わっている仕訳登録機能等を使って、ミス防止策も自動化できるなどのメリットがあります。
インプットとアウトプットのセットで気づきが増える
実際、自社で入力を始めると、
「この経費は先月より増えているな」
「この取引先への売上が落ちているな」
といった変化に自然と気づけるようになります。
数字に対する感度が上がること自体が大きな収穫です。
少しずつ経理担当者も作業者から会社全体の数値を見る習慣が定着していけば、きっとメリットとなるでしょう。
自社で会計ソフトを使っていない場合の導入手順
ステップ1:会計ソフトを選び、現在の顧問税理士に相談する
まずは自社に合った会計ソフトを選びます。
クラウド型の会計ソフトは、パソコンやスマートフォンからいつでも確認でき、
銀行・カードとの連携機能も充実しています。
ここで重要なのは、顧問の税理士に必ず事前に相談することです。
税理士事務所によって、対応できる会計ソフトが異なる場合があるためです。
「自社で入力して月次の数字を早く見たい」という目的を伝えれば、多くの場合、最適な進め方を一緒に考えてもらえます。
もし現在の税理士事務所が自社入力の運用に対応していない場合は、サポート体制を見直すことも選択肢のひとつになります。
ステップ2:初期設定を行い、期首残高や勘定科目を整える
導入時には、次のような初期設定が必要です。
- 期首残高(期の始まりの預金・借入金などの残高)の登録
- 勘定科目(経費や売上の分類名)の整理
- 銀行口座・クレジットカード・ネットバンキングとの連携設定
- 取引先や部門(必要に応じて)の登録
この部分は、税理士や会計の専門家と一緒に進めると、後から修正する手間が大きく減ります。
最初に土台を整えておくことがその後の運用を楽にする最大のポイントです。
ステップ3:運用ルールを決めて、小さく始める
いきなり完璧を目指す必要はありません。
まずは次のようなルールで、小さく始めてみましょう。
- 入力・確認の担当者と、確認する頻度(週1回など)を決める
- 領収書や請求書は、受け取ったらすぐにスキャン・撮影して保管する
- 判断に迷う取引は、そのままにせず、税理士にその都度確認する
- 月末後、○営業日以内に試算表を確認する、という期限を決める
慣れてきたら、「月次決算を月初5営業日で締める」といった目標を設定します。
月次の数字を会議で共有する習慣ができれば、
会計ソフトは、会社の成長を支える強い武器になります。
まとめ
- 税理士事務所任せの経理は、資料のやり取りや順番待ちがあり、月次決算の早期化に限界がある
- 数字の確認が遅れるほど、値上げや資金繰りの悪化への対応も遅れ、利益を失うリスクが高まる
- 会計ソフトは申告のためだけでなく、自社で数値分析を行うための便利ツールである
- 日々の入力と確認は自社、チェックと税務判断は専門家という役割分担が効率的
- 導入は「ソフト選定と税理士への相談」→「初期設定」→「運用ルールづくり」の順に、小さく始めるのがコツ
「自社に合った会計ソフトの選び方がわからない」
「導入したいが、何から始めればよいかわからない」
そんなお悩みをお持ちの方は、ぜひ一度ご相談ください。
