経理も税理士もいるのに、経営の数字が見えない
中小企業の経営者と話をしていると、よくこんな声を聞きます。
「毎月試算表は出ているけれど、経営判断にどう使えばいいのか分からない」
「税理士には相談しているが、経営の話までは踏み込めない」
「経理担当者はいるが、数字の分析までは難しそうだ」
帳簿は整っている。
税務申告も問題なくできている。
それでも、「数字が経営に活きているか」と聞かれると、少し考えてしまう。
こうした状態は、実は珍しいものではありません。
その理由の一つに、中小企業では“財務を経営視点で見る役割”が不在になりやすいという事情があります。
この役割を担う存在として、最近少しずつ知られるようになってきたのが「社外経理部長」という立場です。
ただ、この言葉はまだ一般的とは言えません。
名前からは何をする人なのか、少し分かりにくいかもしれません。
そこで今回は、「社外経理部長とは何か」を整理してみたいと思います。
経理・税理士・CFOの役割の違い
まず、「社外経理部長」を理解するためには、会社に関わるお金の役割を整理してみると分かりやすくなります。
税理士の役割
税理士の役割は、主に税務です。
決算書や申告書を作成し、税務上の問題がないようにチェックする。
法律に基づいて正しく税金を計算して申告することが専門分野です。
経理担当者の役割
経理担当者の役割は、日々の実務です。
売上や仕入の記帳、請求書の発行、支払管理など、会社のお金の動きを正確に記録し、処理していきます。
会社の数字を作る大切な仕事です。
CFOの役割
そして大企業には、もう一つの役割があります。
それが『CFO(最高財務責任者)』です。
CFOは、会社の財務を経営視点で見る役割です。
例えば、
- 数字から会社の状況を読み取る
- 資金繰りを設計する
- 投資や借入の判断材料を整理する
- 経営会議で数字をもとに議論する
といった仕事を担います。
ところが中小企業では、このCFOの役割が存在しないことが多いのが現実です。
経営者が自分で数字を見て判断する場合もありますし、税理士や経理担当者に相談することもあるでしょう。
ただ、それぞれ本来の役割があるため、「経営のための財務」を専門的に扱う人がいない状態になりやすいのです。
その空白を埋める存在が「社外経理部長」
こうした状況の中で登場してきたのが、社外経理部長という考え方です。
社外経理部長は、名前の通り「社外にいる経理部長」です。
会社に常駐する役職ではありませんが、経理部長や財務責任者に近い視点で数字を見る役割を担います。
具体的には、次のような仕事を行います。
- 月次の数字を整理し、会社の状況を把握する
- 試算表を経営判断に使える形に整える
- 資金繰りの見通しを立てる
- 経営会議で使う数字資料を整理する
- 経理業務の進め方を改善する
重要なのは、経理業務そのものを代行することが目的ではないという点です。
日々の記帳や支払処理は経理担当者が担い、税務は税理士が担当します。
そのうえで、会社の数字を「経営の視点」で整理し直すのが社外経理部長の役割です。
言い換えると、
「経理」「税務」と「経営判断」の間にある部分をつなぐ立場と言えるかもしれません。
中小企業でこの役割が求められる理由
中小企業では、会社の規模に対して求められる経営の難易度が年々高くなっています。
原材料費や人件費の上昇、金融機関の審査の厳格化、補助金や融資の制度の複雑化など、
会社の数字を正しく理解しておく必要性は以前よりも大きくなっています。
一方で、財務や管理会計の専門人材を社内に採用するのは簡単ではありません。
人材市場でも数は限られていますし、コストの問題もあります。
そのため、必要な機能だけを社外から補うという形で、社外経理部長という役割が広がりつつあります。
これは特別な仕組みというよりも、
「会社の中に足りない役割を外部の力で補う」という発想に近いものです。
『経理代行』や経営コンサルティングではダメなのか?
ここまで読むと、次のような疑問を持つ方もいるかもしれません。
「経理の外注サービスがあれば十分なのでは?」
「経営コンサルタントに相談すればいいのでは?」
どちらも会社を支える重要なサービスですし、状況によってはとても有効です。
ただ、それぞれ役割が少し異なります。
経理業務の外注(経理代行)
経理代行サービスは、主に日常の経理業務を外部に任せる仕組みです。
- 記帳業務
- 請求書発行
- 支払処理
- 経費精算
といった実務を代行することで、社内の業務負担を軽減することが主な目的になります。
つまり、「経理業務を回すこと」に重点が置かれているサービスです。
定常業務を効率よく一定品質を確保するのが最大の強みと言えます。
一方で、大手では沢山のスタッフが一定水準の業務品質をコストに見合う形で提供することが求められるため、
業務の標準化が必須の領域と言えます。
その分、各社ごとの細部にわたる事情まで考慮するのが難しい面も否めません。
また、経営の数字をどう読み取るか、会社の状況をどう整理するか、といった部分は必ずしもサービスの中心ではありません。
経営コンサルティング
経営コンサルティングは、経営戦略や事業の方向性など、より広いテーマを扱います。
- 事業戦略の立案
- 組織改革
- 新規事業の検討
- マーケティング支援
会社全体を俯瞰してアドバイスを行う点が特徴です。
ただし、コンサルティングでは、日々の経理データの整理や管理会計の仕組みづくりまで深く関わるケースは多くありません。
数字の「実務」と「経営」の間にある領域
実際の中小企業の現場では、もう少し現実的な課題が存在します。
例えば、
- 試算表はあるが、どこを見ればいいのか分からない
- 資金繰りの先行きが見えにくい
- 数字をもとにした経営会議ができていない
こうした課題は、経理実務だけでも、経営コンサルティングだけでも解決しにくいことがあります。
なぜなら、そこには「経理の実務を理解したうえで、経営の数字として整理する役割」が必要になるからです。
社外経理部長という立場は、ちょうどこの中間の領域に位置します。
日々の経理データを理解しながら、それを経営判断に使える形に整理する。
その橋渡しをする役割と言えるでしょう。
会計レスキューの立ち位置
私たちが行っている会計レスキューのサービスは、まさにこの「社外経理部長」の立場になります。
ただし、私たちが意識しているのは、
単に外部から数字を分析することではありません。
むしろ大切だと考えているのは、会社の中で数字が活きる仕組みを整えることです。
多くの会社には、すでに経理担当者がいます。
日々の業務を支え、会社のお金を管理している大切な存在です。
しかし、経理業務はどうしても日常業務に追われやすく、
新しい管理方法や分析の仕組みまで手が回らないことも少なくありません。
そこで、
- 月次の数字を整理する方法を整える
- 経営者が判断しやすい資料を作る
- 経理担当者が数字を理解しやすくする
といった形で、会社の中の経理機能を少しずつ整えていく。
「やり方」を指導するだけでなく、実際に手を動かして目の前で「実演しみせる」ことで担当者の方は、より理解を深めてもらえると捉えています。
その結果として、経営者が数字を使って判断できる状態に近づいていく。
そうした役割が、社外経理部長の仕事だと考えています。
社外経理部長は何をする人なのか
まとめると、社外経理部長とは、
税務を担当する税理士でもなく、
日々の処理を行う経理担当者でもなく、
会社の数字を経営の視点で整理する役割を担う存在です。
経理業務を外注するというよりも、
会社の中にある数字を「経営の言葉」に翻訳する役割と言った方が近いかもしれません。
言葉だけを見ると少し新しい概念に感じるかもしれませんが、
本来は大企業では当たり前に存在している役割です。
中小企業でも、こうした視点で数字を見る仕組みが整うと、
試算表や会計データの意味合いが少し変わって見えてくることがあります。
社外経理部長という言葉は、そのための一つの役割を表したものと言えるでしょう。
