「損益計算書は毎月出てくるけれど、正直よく分からない」「なんとなく売上と利益だけ見て終わっている」。そんな経営者の方は少なくありません。数字が苦手だと、どこに課題があるのかがぼんやりしたままになり、せっかくの決算データが経営判断に活かされません。この記事では、中小企業の経営者・経理担当者向けに、損益計算書の“流れ”を30秒でつかむ考え方と、私自身が財務諸表論の勉強でつまずいた体験を交えながら分かりやすく解説します。
損益計算書が読めないと困る事
まずは「損益計算書が読めないと何が起きるのか」を押さえておくと、その重要性が腹落ちします。
経営者が損益計算書を正しく読み取れないと、いちばんの問題は「判断の遅れ」です。たとえば売上は伸びているのに、なぜか資金繰りが苦しいというケース。よく見ると、粗利率が下がっていたり、販管費がじわじわ増えて利益を圧迫していたりします。ところが数字の意味を理解していないと、その変化に気づくのが遅れます。その結果、不要な固定費を抱え続けたり、本来であれば踏み込むべき投資をためらったりして、会社の成長スピードを自分で落としてしまうことにつながります。
損益計算書の全体像をつかむ
次に、「細かい勘定科目を覚える前に、まずは全体の流れをつかむ」ことが大切です。ここを押さえると、損益計算書が一気に読みやすくなります。
売上から利益までの基本の流れ
損益計算書は、上から順に「売上高 → 売上原価 → 粗利益 → 販管費 → 営業利益 → 経常利益 → 当期純利益」という流れで並んでいます。この縦の流れは、会社の“収益構造のストーリー”そのものです。まずは、この並びを紙に書き出して頭に入れておくことをおすすめします。
例えば、「売上は増えているのに粗利益があまり増えていない」のは、値引きが多かったり、仕入原価が上がっていたりするサインです。また、「粗利益は十分なのに営業利益が薄い」場合は、販管費(人件費や広告宣伝費など)が増えすぎている可能性があります。このように、どこで利益が削られているのかを一目で追えるのが損益計算書の大きなメリットです。
経営者が見るべき重要指標
勘定科目をすべて暗記する必要はありませんが、経営者として必ず押さえておきたいポイントがあります。
特に意識したいのは「粗利益」と「営業利益」です。粗利益は、本業でどれだけ稼げているかを示す数字であり、ビジネスモデルそのものの強さが表れます。営業利益は、そこに販管費を加味したうえで、事業としてどれだけ健全かを示す指標です。この二つが安定していれば、多少売上がぶれても会社は大きく崩れにくくなります。逆に、いくら売上が伸びていても粗利率や営業利益率が低いままだと、手元に資金が残らず、常に資金繰りに追われる状態から抜け出せません。
私が損益計算書でつまずいた話
ここからは、私自身が損益計算書を理解するまでに経験した「つまずき」の話を少しだけご紹介します。
実は私も、最初から損益計算書をすんなり理解できていたわけではありません。税理士試験の財務諸表論を勉強し始めた頃は、「売上原価って何?」「営業利益と経常利益の違いは?」というレベルでした。テキストを読んでも頭に入らず、答練では何度も同じところで間違え、正直なところ心が折れかけました。
そこで行ったのが、「毎日、売上から当期純利益までの流れを手書きで書き出す」という地味な作業です。最初は意味が分からなくても、とにかく順番だけは覚えるように続けました。すると、ある日ふと「ここで粗利が削られると、最終利益までずっと響くんだな」と腑に落ちた瞬間がありました。一度つながってしまうと、会社の数字を見たときに、どこが弱くてどこが強いのかが自然と見えるようになります。この経験があるからこそ、数字が苦手な経営者の気持ちもよく分かりますし、どこから説明すれば理解しやすいかも実務の肌感覚としてお伝えできると考えています。
まとめ:まずは流れをつかむ
損益計算書は、専門家だけのものではなく、経営者が会社の健康状態を確認するための「ダッシュボード」です。すべての用語を完璧に暗記する必要はありません。まずは「売上から利益までの流れ」と「粗利益・営業利益に注目する習慣」を身につけることが第一歩です。それだけでも、支出の見直しや投資判断の精度は大きく変わります。もし、会社の数字をもっと経営に活かしたいと感じているなら、損益計算書の読み方とあわせて、管理会計の仕組みづくりや経理担当者の育成にも取り組むことで、数字が自然と経営判断に結びつく体制を整えていくことができます。
