中小企業の会計を進化させるために『最初にやること』とは?

前回までは、「社外経理部長とは何か」という役割についてお伝えしてきました。
今回は一歩踏み込み、「実際に関与した直後に何をするのか」を具体的に解説します。
ここが見えないと、導入後のイメージが持てず、検討も進みません。
抽象的な説明ではなく、実務レベルでの動きをそのままお伝えします。

最初に行うのは徹底した現状把握

最初に行うのは改善計画を立てることではありません。
徹底した現状把握です。

なぜなら、現状を正しく把握しない限り、何が課題で何を優先すべきかが判断できないからです。
見えていない状態で改善に着手すると、場当たり的な対応になり、かえって混乱を招きかねません。
私たちが大切にしているのは「日常業務を止めずに進化させること」です。
臨時のサポート役として社外から深く入り込む社外経理部長だからこそ価値が発揮される、そう考えています。

数字にまつわる確認

数字の確認では試算表の数値以外にもどのような数値管理をしているかを確認します。

電卓と損益計算書

具体的には、以下のような点を一つずつ洗い出します。

  • 主要数値の過去数年の推移
     ⇒ 傾向
  • 主要数値の年間推移の傾向
     ⇒ 季節変動
  • 損益構造
     ⇒ 各利益の額と利益率
  • 資金の動き
     ⇒ 資金繰り
  • 事業の特色
     ⇒ 事業別損益と資金の流れ

業務にまつわる確認

現状把握では、数字の動きを見るだけでは不十分です。
業務の状況も確認します。

具体的には、以下のような点を一つずつ洗い出します。

  • 年間の決算が確定される時期
  • 月次決算が実施されているか、締めまでの期間
  • 会計ソフトの利用状況や入力方法
  • 売上や仕入がどのように集計されているか
  • 各部門からの数値がどのように集まっているか
  • 資金繰りの把握方法があるのか、また具体的な方法

データだけでなく、ヒアリングも重視する

数字などは、客観的なデータに勝るものはありません。
でもすべての会社が客観的に会社の状況を表すデータが全て備わっているわけではありません。
そんな時、経営者や経理担当者へのヒアリングはとても貴重な情報源です。

パソコンを見ながら社長に説明する男性

特に経営者は、きちんとした裏付けのあるデータが無くても、過去の経験則から直感的におおまかな数字を把握しているケースが良くあります。
ですから、直感でも良いので事業の状況について経営者からの「生の声」を聞くことで不足している情報を補完します。

課題の整理と優先順位のすり合わせ

現状把握が終わったら、次に行うのが課題の整理です。
洗い出した内容をもとに、どこに問題があるのかを明確にします。

専門家視点で課題を構造化する

課題は単発で存在しているわけではありません。
多くの場合、いくつかの問題が連鎖しています。

例えば、月次決算が遅れている背景には、資料提出の遅れや役割分担の不明確さがあることが多いです。
このように、表面的な問題だけでなく、その原因まで含めて整理します。

経営者の認識とのすり合わせ

課題の優先順位は、専門家の視点だけで決めるものではありません。
経営者が感じている課題も非常に重要です。

そのため、ヒアリングを通じて、経営者が何に困っているのかを整理します。
その上で、重要度と緊急度の観点から優先順位をすり合わせます。

これにより、「どうなりたいか」と「今やるべきこと」が明確になります。

当面のゴールと最終着地点の設定

次に行うのが、ゴール設定です。
ここでは、「当面のゴール」と「最終着地点」の2段階で整理します。

ステップからゴールへのメモ書きとPCとペン

最終着地点を先に決める

会計の基盤構築の目的が何なのかを明確にします。
なんとなく「数字が見れるようになる」のでは、企業として得るものは何もありません。

『利益目標達成のために事業別に予算実績管理をして、事業の軌道修正の頻度を月次レベルに引き上げる』

上記のように具体的なゴール設定を具体的にしておくと、「何を追加して、何を捨てても良いのか?」が明確になると思います。

当面のゴール設定

いきなり理想の状態を目指しても、現場が追いつきません。
そのため、現実的なステップに分解します。

例えば、月次決算ができていない会社であれば、
当面のゴールは、

「月次決算を毎月確実に締められる状態」

とします。

このように段階を分けることで、無理なく前進できる計画になります。

基盤構築と改善施策の具体化

ゴールが決まったら、それに向けた具体的な施策を設計します。
ここでは、実務レベルでの整備内容を明確にします。

対象となる主な整備項目

会社の状況に応じて異なりますが、主に以下のような項目に着手します。

  • 月次決算の早期化に向けた業務フローの整備
  • 会計ソフトの導入または運用方法の見直し
  • 予算実績管理の仕組み構築
  • 資金繰り実績の集計方法の整備
  • 資金繰り予測の作成方法の確立

業務ルールと役割の明確化

数字を整えるためには、業務の流れを明確にする必要があります。

例えば、

  • 売上見込みは誰が作成するのか
  • 仕入の状況は誰が把握しているのか
  • 棚卸はどのタイミングで誰が行うのか

こうした役割とルールを一つずつ決めていきます。
これにより、属人化を防ぎ、再現性のある仕組みが構築されます。

役割分担とスケジュールの具体化

施策が決まったら、次に行うのが役割分担の整理です。
誰が何を担当するのかを明確にします。

自社で行う業務と外部に任せる業務の整理

すべてを外部に任せるのではなく、自社で対応できる部分は自社で行います。
一方で、専門性が必要な部分やリソースが足りない部分は外部に委ねます。

この切り分けを明確にすることで、無理のない体制が構築できます。

プロジェクト進行の体制づくり

進捗管理を誰が行うのか。
部門横断の調整役は誰か。

こうした役割も含めて決めていきます。
これにより、途中で止まらないプロジェクトになります。

さらに、スケジュールを線表に落とし込み、いつ何をやるのかを明確にします。

進捗は定期的に確認し、遅れが出た場合は、そのままにするのか、テコ入れを行うのかを判断します。
こうした管理を継続することで、計画が形だけで終わることを防ぎます。

まとめ

社外経理部長が最初にやることは、特別なことではありません。
しかし、すべての土台になる重要な工程です。

・徹底した現状把握を行う
・課題を整理し優先順位を決める
・ゴールを段階的に設定する
・具体的な施策と役割分担を決める
・スケジュールを管理しながら進める

この流れを丁寧に実行することで、数字は初めて経営に使えるものになります。
重要なのは、最初の一歩を曖昧にしないことです。
ここが、その後のすべてを左右します。

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