試算表はあるのに、経営判断に使えていない
多くの中小企業では、経理はきちんと機能しています。
毎月の試算表は作られ、顧問税理士もついている。
決算書も問題なく完成し、税務申告も滞りなく行われている。

一見すると、会社の数字に関する体制は整っているように見えます。
しかし、経営者と話をしていると、こんな声を聞くことがあります。
「毎月試算表は出ているけれど、正直どう見ればいいのか分からない」
「利益は出ているはずなのに、お金が残っている感覚がない」
「数字を見て経営判断をしている、という実感がない」
つまり、数字は集計されて見ることができる。
けれども、経営に活かされている感覚がない。
この状態は決して珍しいものではありません。
むしろ多くの中小企業が、同じような状況に直面しています。
経理は回っている。税理士もいる。
それでも「経営の数字」が見えてこない。
なぜ、このようなことが起きるのでしょうか。
その理由を整理してみると、会社の中にある“役割の違い”が見えてきます。
経理と税理士の役割は?
経理の役割は「会社の取引を正確に記録すること」
まず、経理の役割です。
経理の仕事は、日々の取引を正確に記録し、帳簿を整えることです。
請求書や領収書を整理し、仕訳を入力し、試算表を作る。
これらはすべて、会社で起きた取引を「記録する」仕事です。

この作業が正確に行われていなければ、会社のお金の流れは分からなくなりますし、決算書も作れません。
つまり経理は、企業活動を支える重要な基盤となる役割です。
ただし、ここで一つ理解しておきたいことがあります。
経理の仕事は、基本的に「過去の出来事を整理すること」です。
会社で起きた取引を正確に記録することが中心であり、その数字をどのように経営判断に活かすかという部分までは、必ずしも業務の範囲に含まれているとは限りません。
税理士の役割は「税務の専門家」
一方、税理士の役割は少し異なります。
税理士は税務の専門家です。
税法に基づいて正しい申告を行うこと、税務調査に対応すること、税金に関する相談に応じること。
こうした業務が主な仕事になります。

企業にとって税務は非常に重要な領域です。
税務申告を誤れば、思わぬリスクを抱えることにもなりかねません。
そのため、税務の専門家が関わることには大きな意味があります。
ただし、税理士の仕事も基本的には「税務」が中心です。
試算表をもとに税務処理を行うことはあっても、その数字を日常的に経営判断の材料として整理する役割とは少し異なります。
税務は確定した数値を正確に取り扱うことが何よりも重要なため、不確かな未来予測のような予断を含んだ数値ではなく、『確定した過去の数値』を重視する領域でもあるのです。
中小企業では「数字を経営に活かす役割」が抜けやすい
ここで一つの視点があります。
会社の数字に関わる仕事は、実は大きく三つの役割に分けることができます。
- 経理(取引を記録する)
- 税務(税金を計算し申告する)
- 財務(数字を経営に活かす)
大企業では、この三つの役割がそれぞれの部門や担当者によって担われています。
財務部門やCFO(最高財務責任者)が、経営者の近くで数字を分析し、資金計画や経営判断を支える役割を果たします。
しかし、中小企業ではこの三つ目の役割が社内に存在しないことが少なくありません。
経理はいる。税理士もいる。
それでも「数字を経営に活かす人」がいない。
その結果、試算表は毎月作られているにもかかわらず、経営判断に十分活用されないという状況が生まれてしまいます。
数字は存在しているのに、経営の材料として整理されていない。
これは多くの企業で見られる状態です。
中小企業に必要な機能
社外経理部長という役割
こうした背景の中で、少しずつ広がっている考え方が「社外経理部長」という存在です。
社外経理部長とは、会社の外部にいながら、経理と経営の間に立って数字を整理し、経営に活かす視点を提供する役割を担う人を指します。

経理担当者が作成した試算表を、経営の視点で読み解く。
数字を整理し、会社の状態を分かりやすく伝える。
必要に応じて、経営会議の資料などを整えることもあります。
つまり、単なる会計処理ではなく、数字を「経営に使える形」に整える役割です。
経理の仕事を代わりに行うわけではありません。
また、税理士のように税務を担当するわけでもありません。
経理と経営の間に立ち、数字を経営の言葉に翻訳する。
そうした立場に近い役割と言えるでしょう。
『将来の予測』の把握とその最大化を目的に『過去の数値を一つの参考データ』として取り扱う点が、『確定した過去の数値』を重視する税務と異なります。
数字を整理する人がいるだけで、経営は変わる
多くの経営者は、会社の数字を大まかには把握しています。
売上や利益の状況、資金の残高など、重要なポイントは日々意識しているはずです。
しかし、試算表を細かく読み込み、数字の背景まで分析する時間を確保するのは簡単ではありません。
一方で、経理担当者は日常業務に追われています。
請求書の発行、支払管理、仕訳入力など、日々の業務だけでも多くの時間が必要です。
そのため、数字を経営の視点で整理するという仕事は、どうしても後回しになりがちです。
結果として、「試算表はあるが深く見られていない」という状態が続いてしまいます。
もし、数字を整理し、経営の視点で読み解く役割を担う人がいれば、同じ試算表でも見え方は大きく変わります。
利益の構造や事業ごとの状況、資金の動きなどが整理されるだけでも、経営判断は格段にしやすくなるものです。
「数字を経営に活かす」という視点
多くの会社では、経理はきちんと機能しています。
税理士もいて、決算や税務申告も問題なく進んでいます。
それでも、「数字が経営に活きていない」と感じることがあります。
その理由は、会社の中に「数字を経営に活かす役割」が存在していないからかもしれません。
経理は記録する役割。
税理士は税務の専門家。
そして、その間にあるのが、数字を整理し経営の判断材料にする役割です。
社外経理部長とは、そうした役割を外部から担う存在です。
経理や税理士とは少し違う立場で、会社の数字を「経営に使える形」に整える。
そのような役割があることを知っておくだけでも、会社の数字の見え方は変わってくるかもしれません。
中小企業の数値管理で気を付けたいこと
網羅的にあれもこれも欲しがらない
数値管理を気合を入れて始めると、いろんな数値が気になります。
経営指標は沢山ありますので、それを網羅的に一覧にして経営会議で報告することになります。
経理担当者は資料を作成するために会議前日に大忙しで残業が増えたりします。
会議は、
「状況は良く分かった。」
「で、一体何をすればいい?」
という状態に陥ることも良く目にする光景です。
自社に最も必要な情報は何なのか?
網羅的にいろいろな数値を把握することは悪いことではありませんが、コストがかかる、論点がぼやけてしまう、といった弊害も多いものです。
目指す目標があって、達成されていないなら、達成の障害になっていることは一体何なのかを考えて、その状況を数値で把握することに力点を置くと良いでしょう。
もし、それ自体が明確に把握できていなければ、仮説を立てて、測定するのも良いかもしれません。
例えば、
売上は上がっているのに利益が出ていない
ということが課題となっていたとします。
利益率の良い商品・サービスと利益率の悪い商品・サービスがあるかもしれない
という仮説を立てたとします。
そうしたら、事業別や商品・サービス別に利益率が把握できるようにして、その観測をします。
取引先によって売価が異なり、赤字取引先があるかもしれない
という仮説を立てたなら、取引先別の利益率を観測してみると良いでしょう。
大切なのは行動に移せること
仮説検証ができたときに大切なのは、結果をこれからの行動に移せることです。
例えば、
◆商品・サービスごとに大きな利益率の差異が無い
◆得意先によって利益率の差異が大きい
という結果が出たとします。
まずは、そうなった原因を分析します。
実は得意先ごとに決めている営業担当者ごとに大きな差があった
ということに突き当たったら、なぜそうなっているかを考えます。
担当者を責めることは簡単ですが、
そもそも見積提示の社内ルールが無い
ということが、原因だったりします。
そうしたら、
見積のルールを見直す
という改善案につなげることができます。
このように、数値分析は最終的に改善につながる行動に落とし込めることが何より大切です。

「良かった」「悪かった」
と、一喜一憂するだけですと、指標が増えたところで気苦労が増えたり、それで誰かが責めらるだけで、会社が良くなる武器にはなりません。
次の記事からは、『社外経理部長』がどんなことをするか? 具体的な業務についてお伝えしたいと思います。
