「減価償却費」と聞いて何を思い浮かべますでしょうか?
ここでは細かな用語の定義は後回しにして、どんなことに注意すべきか、「経営者目線」から減価償却費について考えていきます。
【ポイント1】「現金支出が伴わない費用である」
費用は通常、資金の流出を伴いますが、減価償却費が計上されても、現金が減ることはありません。
「利益が出てるのに資金が思ったほど溜まっていない」と嘆く経営者の方は多いですが、減価償却費が多額であれば、赤字なのに資金が増えている、といったことも起きます。
専門的には「自己金融効果」などとも言いますが、減価償却相当額の資金が企業内に留保され(内部留保され)、実質的に資金調達(金融)を行ったのと同じ効果が得られます。
費用のうち、減価償却費がいくらなのかは金融機関も良く見ています。
資金流出の無い費用として、営業利益に減価償却費を加算して見ることも多いようです。
ですから、自社の減価償却費がいくらなのかはとても重要な指標となります。
- 減価償却費は、資金流出しない特別な費用。
- 重要な指標である減価償却費の金額を知っておくことが重要。
【ポイント2】「償却期間が終わると経費がゼロになる」
減価償却費は資産ごとに決まった「耐用年数(償却期間)」で償却(費用化)されます。
例えば新車の乗用車を購入したら、耐用年数は6年なので毎年少しずつ償却(費用化)され、購入から6年後には資産価値がゼロとなります。
少額の固定資産であればインパクトは小さいので気にしなくても良いですが、工場や建物の建築、金額の大きい機械の導入などをした場合には、その資産の償却期間が何年で現在は償却何年目であと何年償却するか?は気にするべきでしょう。
経費が急に減って利益が増加する影響
大きな資産の償却期間が終われば、急に費用の発生が減ります。
利益が増えることは大きなメリットではあります。
毎期黒字になるかヒヤヒヤしながら決算を迎えるような企業では費用負担が減り、金融機関にも利益確保の報告ができて安心材料となるかもしれません。
一方で、利益が増えると税金は増えます。
大きな資産の減価償却が終了した時のインパクトは、大きなものになります。
利益が増加して資金が減少することもあり得る
先ほどお伝えしたように減価償却費は資金流出を伴わない費用なので、減価償却費が無くなっても資金が増えるわけではありません。
しかし利益は増えるので、結果的に納税額が増えたことにより、資金が減ってしまう、という現象も起きかねません。
- 減価償却が終了すると、その分の利益が増加する。
- 利益増加が納税額の増加を招き、資金繰りに影響する。
だからと言って、納税額を抑制するために不要な資産の購入を進めているわけではありません。
大きな資産については、「残りの償却期間」と「償却額」を気にしておくことが大切です。
なお、償却期間は資産の種類と用途ごとに税法上許された「耐用年数」を使用して計算するのが一般的です。
耐用年数を知りたい方は、以下の表を参考してください。
【ポイント3】「買い替えや新規購入は資金が一気に減少する」
固定資産の耐用年数とは、「資産がこれくらい使える」年数という考え方です。
だからと言って、耐用年数が到来したからと言って必ず買い替えが必要とは限りません。
耐用年数を過ぎても壊れず使い続けられる場合もありますし、逆に耐用年数を迎える前に壊れて使えなくなったり、技術革新のスピードが速すぎて陳腐化してしまって使い物にならなくなるかもしれません。
ここで大切なのは、購入や買い替えには、多額に資金が必要ということです。
1千万円の機械を購入しても、1千万円の経費を計上できるわけではありません。
税額が極端に安くなるわけではありませんので、購入資金を相殺するようなメリットは享受できません。
- 固定資産の新規取得は、税額圧縮の寄与は少ない。
- 買い替えや新規購入には多額の資金が必要となる。
経営者として、どんなことを心がけたら良いのか?
では、これまで見てきた3つのポイントを踏まえて、経営者としてはどんなことをしたら良いのでしょうか?
【やるべきこと1】固定資産台帳を見ること
まずは固定資産台帳をいつでも見ることができる様にしておきます。
月次決算書で減価償却や資産種類別の金額は分かります。
しかしながら、その内訳まではわかりません。
固定資産台帳があれば「減価償却の金額」も「資産の金額(残存価額)」も「耐用年数」も簡単に把握できます。
【やるべきこと2】資産の買い替えや新規取得を計画的に行う
固定資産台帳で現状把握をしつつ、保有資産をいつ買い替えすべきか、将来的な見通しを考えておきます。
資金手当てとして何年後にいくらぐらいを見積もっておけばいいのか、償却が終了する時期がいつで、税額への影響はどの程度なのか?の見通しを立てることです。
これらを行うことにより、「より計画性のある事業運営」が可能となります。
